イギリスの将来を決める「運命の3日間」が終わりましたが、終わってみれば、一層ブレグジットの混迷を深め、霧の中に迷い込むかのような結論となっています。
離脱合意案は、2回目の採決も否決され、ならば合意なき離脱をするのかと言えば、合意なき離脱はしないと採決し、ではどうするのかと言えば、離脱日の3月29日を6月30日まで3か月間延期するという先延ばしの判断しかできませんでした。
イギリスは、6月30日までに離脱しませんと、この先ずっと最低5年間は、EUを離脱できなくなる。
5月23日~26日に5年ごとの欧州議会選挙があり、7月から欧州議員が一新されます。
7月以降もイギリスがEUに残るならば、加盟国としてイギリスも議会選挙をしなければならず、議員を選出しなければならなくなる。
そして欧州議員にイギリス人がなれば当然、EUからの離脱はできなくなる。
イギリスとしては離脱するわけですから、欧州議会選挙をする気はなく、ならば6月末までにEUを離脱しなければならない。
その6月30日が実質的な離脱期限となるわけですが、それもあくまで過去2回とも大差で否決された離脱修正案を可決することが前提です。
EUとの離脱合意案をイギリス議会が否決ではなく、可決し、メイ首相の案を飲まなければ短期の離脱日延期もできない。
しかしほんの数日前の12日に大差で否決したばかりの案です。
それをイギリス議会は来週の3月20日までに可決しなければ、短期の離脱日の延期もできなくなる。
3月21からEU首脳会議があるために、それまでに可決にもっていけるかどうかがメイ首相の腕の見せどころでしょう。
はっきり言えば、離脱合意案を否決した議員を暗に脅しているということです。
メイ首相案を可決すれば、3か月という短期間の延期で済み、ノー・ディール・ブレグジット(合意なき離脱)は避けられ、EUから秩序ある離脱ができるけれども、3回目の採決もまた否決する気ならば当然、メイ首相はそれでもEUに延期を要請する腹積もりですから、この場合、3か月ぐらいの延期では済まなくなる。
かなりの長期間に渡ってイギリスは、EUを離脱できなくなる。
最低1年間は離脱できそうにありません。
3月29日に予定している英国の欧州連合(EU)離脱について、EU首脳が少なくとも1年以上の延期を検討していることが14日、わかった。
長期の延長となれば、英国で離脱の是非を問う国民投票の再実施を求める声が高まり、離脱が取りやめになる可能性も出てくる。
EU関係者によると、「長期の延長」とは「少なくとも1年以上」を意味しているという。
メイ首相からすれば、私の合意案を飲めば、3か月間という短期間の延期で済み、円滑にEUから離脱できるけれども、もしまた否決するようなことがあれば、今度は相当長い間、EUを離脱できなくなりますよ、いいんですか?
離脱したいのでしょう?
離脱できなくなりますよ。
嫌ならば、今度はちゃんと飲みなさい。
そうでないと相当長期間離脱できなくなり、いずれ離脱そのものができなくなりますよ。
こう脅しているわけです。
EUからすれば、たとえ合意案をイギリスが飲んでも、双方の合意を前提としたバックストップでイギリスを恒久的にEUの関税同盟に置いておけるし、否決してもメイ首相を通して長期間延期して、イギリスをEU内にとどめておくこともできる。
EUとの離脱合意案を可決しても、否決しても、どちらでもイギリスは、EUから離脱できない。
いずれ2回目の国民投票によって離脱そのものを放棄させることもできる。
結局、EUの首脳は、イギリスに離れて欲しくないのでしょう。
離脱強硬派は、100名ほどいるようですが、次にどうでるかでしょうね。
残された道は、再度の国民投票か、総選挙か、離脱の撤回しかないように見えますが、最後は合意なき離脱の強硬策をとるかもしれない。
次ぎにどう動くか分からない実に不透明な事態です。
しかして合意なき離脱となりますと大混乱は必至です。
離脱強硬派は追い詰められているわけです。
幼稚な人間は自我だけは強いですから、合意なき離脱を無理やり実行にうつす可能性もある。
イギリス国民はお利口さんになってきているようであり、日産は2月にエクストレイルの次期モデルの生産を中止し、高級車インフィニティのイギリスでの生産も今年半ばにやめます。
ホンダもイギリスのスウィンドン工場を2022年までに閉鎖します。
ドイツのBMWも合意なき離脱の場合、イギリスから撤退すると明言し、イギリスの国民車であるMINIも風前の灯となる。
離脱前は非課税であったVAT(消費税)も課税され、シティから人員が沈む船から逃げ出すように域外のEUに逃げている。
離脱となれば、関税と税関調査が復活し、大混乱となる。
うけたのが輸入頼みのイギリスでは、トイレットペーパーが不足すると予想されている点です。
イギリス国民は、欧州で最もトイレットペーパーを使う国民であり、1人あたりの年間使用量は110ロールです。
1か月に9.2ロール、3日で1ロール使っている計算になる。
かなり多い。
個人が、わずか3日でトイレットペーパーを一つ使いますかね。
なんか非常に多いと思う。
ただこれがブレグジットでは不足すると見られています。
またブレグジットで乳製品が、イギリスでは贅沢品になるかもしれないと言われている。
「イギリスは乳製品の輸入に依存しています。
EUを離脱すれば、我々のサプライチェーンに大きな混乱が生じるでしょう。
乳製品不足、価格の高騰、そしてバター、ヨーグルト、チーズ、赤ちゃんの粉ミルクなど、毎日の食生活に欠かせない乳製品が贅沢品になってしまいます。
国内生産が難しいとされている珍しいチーズも手に入らなくなるかもしれません」
ブレグジットとなれば、イギリスの食事の質も、かなり低下すると予測されている。
イギリスで消費されている野菜のうち、実に85%がEU諸国からの輸入品で賄われている。
イギリスはEUの中でも北に位置し、自前で野菜類を作るにもじゃがいもやにんじんといった根菜類くらいしかできない。
実際にレタスやトマト、きゅうりといったサラダに欠かせない生野菜の調達先はほぼ他国に依存している。
このため、EUから輸入されている食品のうち3分の1以上(品目ベース)は関税が掛けられる見込みだ。
離脱強硬派が、従順にEUの首脳の思惑通り、大人しく従うとは思えず、ノー・ディール・ブレグジット(合意なき離脱)も十分可能性としてはあると思っています。
しかして合意なき離脱をした場合、イングランド銀行の試算では、最悪のシナリオとしてインフレ率は6.5%まで加速し、GDPは前年比で8%下落し、4%のマイナス成長となると予測しています。
もの凄い減少率です。
一気に貧乏ったれになりそうですね。
不透明で不確実な現状にイギリス国外の企業も、次第にイギリスを離れています。
その国民の不安心理を見抜いたのでしょうか。
頼もしい企業が出てきました。
たとえ食料がなくなっても大丈夫なようにサバイバル・キットを販売しています。
まるでアメリカのプレッパーズみたいです。
1人でも30日間は生き延びることができるサバイバル・キット、題して「ブレグジット・ボックス」の販売です。
Brexit Box – Brexit Stockpiling Made Easy
価格は295ポンド(1ポンド=148円/43660円)です。
中身はこれです。
1)缶詰
・マカロニ&チーズ(10人前)
・ボロネーゼ・パスタ(8人前)
・チキン・ティッカ(カレー、8人前)
・チキン・ファヒータ(メキシカン、8人前)
・ビーフ&ポテトシチュー(6人前)
・スイート&サワーチキン(中華、8人前)
・チキンの細切れ(1缶、24パック入り)
・牛肉のひき肉(1缶、24パック入り)
2)パック入り食品(各1人前)
・ボロネーゼ・パスタ
・チキン・ティッカ
・チキン・ファヒータ
・ビーフ&ポテトシチュー
・スイート&サワーチキン
・サーモン・ブロッコリー・パスタ
・野菜ティッカ
・チリ・コン・カーン
・野菜チポトール・チリ
・チキンチャーハン
・マカロニ&チーズ
・野菜チャーハン
3)浄化フィルター付き水ボトル
4)着火ジェル(200ミリリットル)
まさに強い国民の味方。
一度買えば、25年間の保存がききます。
しかしてこれだけの分量では不安だ、そう思ったあなた、大丈夫。
デラックス版も取り揃えている。
その名も「デラックス・ブレグジット・ボックス」。
ブレグジット・ボックスの2倍の容量であり、25年保存の157食分で595ポンド(88060円)。
これでもまだ不安ですか。
家族のことも考えるとこれだけでは足りない。
大丈夫。
家族用のブレグジット・ボックスがあり、なんと3か月も家族が食いつなぐことができる。
その名も「スリー・マンス・ファミリー・エマージェンシー・フード・パック」、価格は獣の数字6・6・6の4500ポンド(66万6000円)。
スリー・マンス・ファミリー・エマージェンシー・フード・パック
なんと1688人分の食糧です。
こちらももちろん25年保存。
そして極め付けはこれ。
1年半年も食いつなぐことができるフード・パック。
18 Months ‘Full Range’ Emergency Food Pack
浄水器から火おこしまでついてこの値段。
どうですか、お客さん。
価格は2450ポンド(36万2600円)。
ちなみに日本では購入できませんので、あしからず。
この地域だけです。
まぁ、こういうものが売られるほど不安が広がっているということですね。
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