カル・ファイアのサイトがアクセス不能になっていたわけですが、最近またアクセスできるようになっています。
カリフォルニアは、地球温暖化による気温上昇が最も顕著な地域の一つですが、山火事はその象徴です。
去年、アメリカで起こった山火事が、如何に異常なレベルにあったのか、数字としてデータに出ています。
これはカリフォルニアだけではなく、全米で何平方キロメートル焼失したのかをあらわしています。
2001年から記録が取られていますが、昨年の総火災面積は圧倒的でした。
「177万9730ヘクタール(1万7797.3平方キロメートル)」の面積が焼失しており、これは北海道に次ぐ面積をもつ岩手県と佐賀県を合わせた面積とほぼ同じです。
カリフォルニア州だけを見ますと、焼失面積トップ20はこうなっています。
焼失面積の大きさでは、トップ20のうち昨年の山火事は「6個」もランクインしています。
しかも歴代上位6位までのうち「5個」の山火事が、去年の山火事で占められています。
トップのオーガスト・コンプレックス・ファイアなど、2018年に記録を更新したばかりのメンドシーノ・コンプレックス・ファイアの2倍以上の焼失面積を誇っています。
2017年にトップの座を更新したトーマス・ファイアは、はや翌年の2018年にメンドシーノ・コンプレックス・ファイアにその座を奪われ、メンドシーノ・コンプレックス・ファイアは、また2年後の昨年2020年にオーガスト・コンプレックス・ファイアにその座を奪われています。
トーマス・ファイアなど7位にまで落ちています。
年々、焼失面積が大きくなっているのです。
建物の破壊トップ20の山火事はこうなっています。
やはりトップ20のうち昨年の山火事が「6個」もランクインしています。
山火事の死者数のトップ20はこれです。
二つの山火事がランクインしています。
去年の山火事が、如何に桁違いの山火事であったのか、よく分かります。
日本で言えば岩手県と佐賀県の両県が、丸ごと焼失したわけであり、このペースで山火事が続けば、47都道府県は、24年で全焼するペースです。
年々、地球温暖化が加速しているということでしょう。
最初に温室効果に気づいたのはフランスの科学者・ジョゼフ・フーリエでした。
果たして地球の平均気温を決定するものは何か。
太陽のエネルギーが当たって、常に地球の表面は暖められているのに、どうして地球は太陽のように高温とならないのか。
フーリエの答えは、熱せられた地球表面が、赤外放射を射出し、それが宇宙空間に熱エネルギーを運び去るというものでした。
フーリエがその効果を計算したところ、気温は氷点下を遥かに下回り、実際の地球よりも寒くなりました。
その違いは地球の大気によるものだとフーリエは気づいたのです。
地球の凍結を防ぎ、大気が地球全体の熱を維持する具体的な方法までは分かりませんでしたが、地球表面の赤外放射の一部を大気が何らかの仕組みでさえぎり、宇宙に逃げるのを防いでいると推論しました。
しかしそれまでの科学的知見では、全ての気体は赤外放射に対して透明であり、さえぎらないと思われていました。
これをそうではないと当時の常識を覆したのが、イギリスの科学者であるジョン・ティンダルでした。
1859年、ティンダルは実験室で全ての大気は、本当に赤外放射に対して透明なのかどうかを実験で確認します。
大気の主成分である酸素と窒素は、確かに透明であることが確認されました。
ティンダルは、ここで実験をやめようとしますが、石炭ガスで試してみることを思いつきます。
石炭を加熱することによって出る気体は、人工的なものであり、主な成分はメタンでした。
照明用に近くにあったため実験してみますと、その気体は透明ではなく、不透明な気体である事実が分かりました。
ティンダルは、更に他の気体を試しますが、二酸化炭素もメタンと同じように不透明な気体である事実を確認します。
更に水蒸気やオゾンも温室効果ガスであることを発見します。
ここで熱収支の重要性が分かったのです。
当時、少量の二酸化炭素が大気中に見られましたが、その濃度は一万分の二、または三ほどの濃度しかありませんでした。
しかしてティンダルは、その温暖化をもたらす仕組みを理解しました。
地球表面から上昇する赤外放射の一部が、大気の真ん中あたりで二酸化炭素に吸収される。
その熱エネルギーは、宇宙空間には逃げず、空気自体に移される。
空気は暖められ、その一部は下向きに放射され、地球表面を暖める。
これによって二酸化炭素がない場合よりも、地球の温度は高いレベルで維持される。
このティンダルの研究をベースに、1896年ストックホルムの科学者であるスヴァンテ・アレニウスが、氷河時代の謎で取り上げます。
仮に大気中の二酸化炭素の量が変えられたとしよう。
火山の噴火等で膨大な量のガスが吐き出され、これによって気温がわずかに上昇し、この小さな増加が重大な結果をもたらす。
暖められた空気は、より多くの水蒸気を含んでおり、これが温暖化を大いに高める。
空気が冷えれば、水蒸気の量は減り、空気が暖まれば、水蒸気の量も増える。
このプロセスが継続すれば、氷河時代が始まるのかもしれない。
空気が冷えれば、水蒸気が減り、水蒸気が減れば、また空気も冷えていく・・・。
このような自己強化の循環的関係は、現在「フィード・バック」と呼ばれますが、ただアレニウスは二酸化炭素濃度を変えた場合の直接的な効果を推測することしかできませんでした。
ただ気温の上下には水蒸気の変化が関係しており、湿度を計算に入れなければならないと気づきます。
その数値計算のためアレニウスは、大気の水分、並びに地球に入る放射と出る放射を計算しました。
しかしてアレニウスが計算したそのデータはとても信頼できるものではなく、科学的に正当と認められるような数値ではありませんでした。
それでもある程度の自信をもって発表しています。
二酸化炭素の量の変化が、気候をどのように変化させるのかを証明するにはほど遠かったわけですが、どのように変化する可能性があるのかは把握していました。
大気中の二酸化炭素の量を半分に減らせば、恐らく世界の気温は摂氏5℃は下がると発表しました。
そしてこれは更にフィード・バックを引き起こし、氷河時代になるかもしれないと考えます。
1896年当時、石炭を燃やして放出された二酸化炭素濃度は、かろうじて1000分の1程度引き上げていました。
だがもしこれが長く続けば、その追加量が問題になってくる。
アレニウスは、大気中の二酸化炭素が2倍になれば、地球の気温は5℃、あるいは6℃上昇すると計算しました。
しかしアレニウスに懸念はありませんでした。
何故なら大気中の二酸化炭素量が2倍になるまで、数千年はかかると見ていたからです。
当時は地球の人口が、倍増している事実を把握していた人は少なく、資源の利用も人口増加よりも早く進んでいることを理解していた人は稀でした。
当時の世界人口は10億人ほどであり、その大部分は小作人であり、農奴でした。
人間に地球全体の気候を変化させる力があるとは誰も信じていなかったのです。
アレニウスが発見したのは、実際の地球温暖化現象ではなく、単なる理論上の概念でした。
1940年代まで地球温暖化による地球規模の変化は、今後何世紀も起こるはずのないことであり、むしろ永遠に起こらない可能性の方が高いと思われていました。
温室効果は、二酸化炭素が増えても何も変わらないという、その昔の説を覆したのが、ギルバート・プラスです。
彼は正式な仕事の、単なる息抜きとして温室効果の研究をしていました。
プラスは、温室効果による気候変化に対する過去の反論を知っていました。
赤外吸収が起こる特定のスペクトルは、既に水蒸気と二酸化炭素によって飽和しており、全ての放射を妨げているので二酸化炭素濃度が増減しても問題はなく、変わらないという過去の反論です。
ところが昔の測定は、海面気圧で測定していたために出た結論でした。
海面気圧による測定では、特定のスペクトルが吸収し、飽和した後は、二酸化炭素を2倍にしようが、増やそうが、何の変化もありませんでした。
しかし大気の上空の希薄で酷寒な空気についてはほとんど分かっていませんでした。
赤外吸収が起こる大部分は、実にこの場所で起こるのです。
海面気圧で完全に放射をさえぎっていた太いバンドは、上空にくると狭いスペクトルに分解していました。
隙間ができますので赤外放射が、そのすき間からすり抜けるのです。
低い気圧での新たな高精度の測定によって、それは裏付けられ、放射が吸収される量は二酸化炭素の増加によって、本当に変化するかもしれない事実が示唆されました。
これ以上のことは大規模な計算をしてみなければ、具体的なことは分からない。
プラスは、当時の発明品であるデジタル計算機で延々と計算していきました。
その結果、二酸化炭素を増やしたり、減らしたりすると大きな影響があり、地表面から宇宙空間に逃げる放射の量が大幅に増減する可能性があることが証明されました。
1956年、ギルバート・プラスは、人間の活動によって地球の平均気温は、一世紀ごとに1.1℃のペースで上昇するだろうと発表しました。
ただプラスの計算には、水蒸気と雲に起こりうる変化が省かれていたため、他の科学者を納得させることはできませんでした。
ただ中心となる論点は、確かに証明されました。
温室効果は、二酸化炭素が増えても何も変わらないと言う昔の主張は退けられたのです。
プラスは、気候変化は未来の世代にとっての深刻な問題となりうると警告しています。
しかしてこのプラスによる温暖化の可能性は除外できないとしても、この理論に対する別の有力な反論がありました。
それは我々人間が大気中に膨大な二酸化炭素を放出しても、それは全て海が飲み込んでくれるだけではないのかという反論です。
1955年、放射性炭素の新たな専門家ハンス・ズュース(スース)が、昔の炭素が現代の大気に加えられていることを見つけたと発表しました。
化石燃料を燃やした時に出てくる炭素は、本当に古く、その放射能は大昔に失われていました。
化石燃料を燃やせば、それはまるでタイムスリップをしたかのように、太古の炭素が現代の大気に加えられるのです。
ズュースが証明した重要な点は、化石燃料を燃やしてでてきた炭素は、確かに大気中にあらわれているという事実です。
ズュースは、化石燃料によって加えられた二酸化炭素の大部分は、すぐ海に取り込まれると結論づけました。
しかし当時は、まだ二酸化炭素を海が吸収するのに100年かかるのか、あるいは1万年かかるのか、海洋学者の誰も知りませんでした。
* この記事は、著・スペンサー・ワート『温暖化の発見とは何か』を参考にしました。
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