昨日、人民元のSDR入りの記事を書きましたが、アメリカは妨害でもしていたのでしょうか。
「アメリカの孤立」という記事が出ています。
「国際通貨基金(IMF)の決定を支持する」
人民元の特別引き出し権(SDR)構成通貨への採用が決まった11月30日。
米財務省が出した拍子抜けするほど短いコメントに、米国の苦虫をかみ潰したような思いがにじんだ。
オバマ政権が徹底抗戦を断念したことに、「米国が孤立したAIIBでの過ちを繰り返したくなかったのでは」(米政府筋)との見方は多い。
人民元のSDR入りに賛成でも反対でもないと思っていたアメリカは、やはり内心では反対だったようです。
AIIBの時と同様の孤立を避けるために、しぶしぶ容認したとあります。
これですね。
今回は「日米」が共に孤立しなくて良かったですね。
今月12月、アメリカの「利上げ」による「世界的規模の債務危機」が懸念されています。
決定的になったのは、恐らく今年2月10日に行われた「G20財務大臣・中央銀行総裁会議」です。
G20声明の光と影 世界的緩和の正当化と消えた一文 みずほ総合研究所
この声明において各国中央銀行は法的使命(マンデート)を果たすために採用する金融緩和を「歓迎する」と表明しました。
物価安定のマンデートを果たす目的としての金融緩和は全く問題なしとして結局、実質的な通貨切り下げ競争を容認することになったのです。
戦争前のようです。
これが世界的規模の債務危機の引き金を引いたのではないか?
アメリカが利上げをすれば、わずかなリターンを求めて先進国の機関投資家が有する運用資産92.6兆ドル(1京1400兆円)の資産がアメリカに流れ込みドル高となる。
エマージング市場からの資金流出は加速され、通貨安となり、為替差損と金利負担のダブルスクイーズとなって打撃を受ける。
準備金を使って通貨を買い支えても、それが金融引き締め効果となり、トリプルスクイーズとなる可能性もある。
このリポートではドル建て債務は9.7兆ドルとありますが、恐らく金融機関等を入れた数字です。
この記事ではドル建て債務は「9兆ドル(1100兆円)」とあります。
日本の2か国分です。
1000兆円のクエスチョン:世界は米利上げに耐えられるか ブルームバーグ
20カ国・地域(G20)財務相らは先週、利上げの副作用を最小限に抑えるように米金融当局に求めたが、最重要の数字に言及しなかった。
9兆ドル(約1070兆円)だ。
これは米国外の借り手(金融機関除く)のドル建て債務の残高だ。
米国が年内に利上げを開始すれば、企業や政府の借り入れコストは上昇しドル高と相まって、ただでさえ弱い世界経済の回復を脅かしかねない。
「流動性環境は全世界で引き締まり始める」
ドル建てで取引される商品の輸出国であるカナダやオーストラリア、通貨をドルにペッグしているため通常、米国に追随して利上げをする香港も影響を免れない。
アメリカが政策金利を「0.25%~0.5%」に利上げをすれば、市場金利も上昇し、借り入れコストも上昇する。
9兆ドル(1100兆円)にものぼる膨大なドル建て債務の金利負担も増加し、通貨安による為替差損も被る。
上記の記事のように、
「流動性環境は全世界で引き締まり始める」
アメリカ一国の問題では済まず、利上げは全世界的規模での金融引き締め効果となる。
ゼロヘッジが述べていた安いドルの燃料によって膨らんだリスク資産「9兆ドル」とは、このドル建て債務のことだったのかもしれません。
エマージング市場(新興国)では、わずか1%の金利でドルを借りられていたようですから、これによる膨大なリスク資産とは、この「9兆ドル(1100兆円)」を指していたのかもしれない。
デリバティブのことだと思っていました。
最近ではユーロ建て債務も史上最高額、「2.8兆ドル(340兆円)」あると言われています。
債務ですから当然、返済を強いられます。
アメリカが利上げをすればどうなるのか?
「IMF」と「世界銀行」は利上げに警鐘を鳴らしています。
米利上げで新興国打撃懸念 世銀「2年で成長率7%減も」 産経
世界銀行は15日、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが新興国に深刻な影響を及ぼすとの報告書を発表した。
市場の混乱と投資資金の減少で、新興国の経済成長率が2年間で平均7%程度落ち込む恐れがあるという。
FRBが金融政策を決める16、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に強く牽制(けんせい)した。
国際通貨基金(IMF)も同様の意向で、FRBは難しい判断を迫られそうだ。
報告書は、2013年5月にFRBのバーナンキ議長(当時)が量的金融緩和政策の縮小を示唆しただけで市場が混乱し、投資資金が新興国から米国に流れ込んだ「バーナンキ・ショック」を紹介。
その上で、FRBが利上げに踏み切れば、米国の長期金利が急騰し、新興国への資金流入は現在より45%も減る恐れがあると分析した。
米経済の先行きには不透明感があり、利上げできる状態かどうか疑わしいことも指摘した。
IMFのラガルド専務理事は今月上旬、FRBに慎重な判断を求めた。
「国際決済銀行(BIS)」も警告しています。
BISは「中国の経済成長減速やドル高、さらに企業のドル建て債務が新興国の脅威になっていると警告」しています。
ドル高と言えば「利上げ」ですから、要はアメリカに「利上げするな」と言っているわけです。
IMFと世界銀行も、アメリカに「利上げをするな」と言っている。
なのにアメリカは「利上げ」をするそうです。
世銀総裁はもっと直接的に警鐘を鳴らしています。
「米国が年内に利上げすれば、新興国市場に深刻な打撃を与える」
利上げすれば、市場は大幅に変動し、新興国は資金調達に窮する事態に陥るだろう
世界全体の景気を引き締めることによって、ブーメランのようにアメリカ自身にも帰ってくると言っている。
アメリカ国外のドル建て債務は「9兆ドル(1100兆円)」ですが、新興国の企業債務は「18兆ドル(2200兆円)」です。
日本の4か国分です。
新興国企業の借金2千兆円に急増 IMF報告、返済不能も 共同
この記事は1ドル=120円で計算しておりますが、122円で計算すれば2200兆円です。
主要な新興国の企業が抱える借金は2014年時点で約18兆ドル(2150兆円)になり、10年前の4・5倍に急増したことを明らかにした。
米国が利上げに踏み切り、金融市場の状況が一変すれば、返済できなくなる恐れがあると警告した。
中国やトルコ、チリ、ブラジル、ペルー、メキシコなどの企業の借金が特に増えていると指摘した。
アメリカが利上げをすれば、返済できなくなる企業や国も出てくる。
だからIMFも世銀もBISも「利上げするな」と言っている。
なのにアメリカは「利上げ」するそうです。
ちょっとしつこいですかね。
市場金利が、わずか「1%」上がるだけで、2200兆円の1%は「22兆円」です。
1100兆円の1%は「11兆円」です。
これにプラス為替差損が加わります。
海外の報道を見ますとこの金利負担と為替差損の二つを「ダブルスクイーズ」と言う方もいます。
今度、不景気になりますと世界各国の中央銀行はどの国も利下げできないのです。
対応できず、打つ手がないのです。
だからアメリカに「利上げするな」と言っているのです。
なのにアメリカは「利上げ」するそうです。
やっぱりしつこいですかね。
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