日銀の「金融システムレポート」が出ました。
2015年6月末現在、金融機関全体で長期金利が1%上昇した場合、「4.7兆円」の損失となり、銀行だけならば「3.1兆円」の損失を抱えることになります。
長期金利が2%上昇した場合、金融機関全体で「9兆円」の損失を抱え、銀行だけならば「5.9兆円」の損失を抱えます。
長期金利が3%上昇した場合は、金融機関全体で「12.8兆円」の損失となり、銀行だけならば「8.5兆円」の損失を抱えると日銀は試算しています。
パラレルシフトというのは、あくまで短期金利と長期金利が一緒に同じパーセンテージで上昇した場合の損失額ですから、実際の損失としては非現実的です。
実際、日銀は短期金利をゼロ近辺まで意図的に低下させるでしょうからパラレルシフトの数字は画餅です。
スティープ化の数字のみを見ていれば現実的な数字となります。
報道では、例えば下記の報道のようにパラレルシフトの損失額を強調して報じています。
何故、こういった報道をするのか知りませんが、国債を減らしているためか去年の末から損失額が減少しています。
起こる確率としては低いけれども、一旦起こると巨大な損失を伴う「テールイベントシナリオ」、これはリーマン・ショックのボトムを想定していますが、この時の資金利益は「2.7兆円」と大幅に落ち込むとあります。
また「アジア経済の成長が減速するシナリオ」である「特定イベント・シナリオ」では、資金利益は2017年度に「3.8兆円」程度まで落ち込むとあります。
肝心かなめの、では日銀自身はどれほどの損失を抱えるのかは分かりません。
既にGDPの60%を超える国債を保有している日銀の損失額は巨額になっているはずであり、金融機関は大丈夫でも日銀まで大丈夫かどうかは定かではありません。
現在、日銀は国債を「310兆円」も保有しているわけであり、国内での保有率はトップです。
長期金利が上昇して最も損失を被るのが日銀のはずです。
国債発行残高の「35%」を既に保有していますが、かつて最もこの比率が高かった国はイギリスの「40%」であり、これを超えて保有していきますと前人未踏の領域に日銀は踏み込むことになります。
どの国の誰も経験したことがない領域です。
いずれそうなるのは時間の問題だと思いますが、少なくとも来年中には必ずそうなります。
「テールイベントシナリオ」は、単に「テールイベント」あるいは「テールリスク」と呼びますが、これは「ブラックスワン」と同義です。
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